夕なぎ


 

波間を走る光る風が

波打ちぎわまでよせてきて

すぐにも青いとどきそうな空と

この指につづく海がある

男は粋なセリフをさがす

女は静かに待ってる

ふたりでつくった砂のお城

 

ここまで歩いてきた足跡は

いつしか風にかき消され

ビンに詰めた二十歳の形見

白いしぶきに運ばれた

男は過ぎゆく時に気づく

女は過ぎない時を祈る

ふたりでつくった砂のお城

 

足もとにとどく夏の残り香は

水に濡れた麦わら帽子

波の影に崩れてゆく城は

指のすき間からこぼれる日々

男は立ち去ろうとする

女は泣きながら聞く 遠い夕なぎ

 

男は立ち去ろうとする

女は泣きながら聞く 遠い夕なぎ

 


 

First Release

1977.10.5 この夜にさよなら

作詞:甲斐よしひろ 五業昌晶

作曲:甲斐よしひろ

編曲:甲斐バンド